JAXA(前)

JAXA内閣府に移管 宇宙開発、偵察衛星や商業利用加速
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090423-00000142-san-pol

政府は22日、宇宙航空分野の研究・開発を行う文部科学省所管の独立行政法人宇宙航空研究開発機構JAXA)」を内閣府に移管する方針を固めた。

JAXAの前身のうちの一つである宇宙科学研究所(ISAS)は、もともと大学共同利用機関、さらにさかのぼれば東京大学の附属機関でした。機関としては、宇宙航空研究所、さらに航空研究所にまでさかのぼれます。
 
なお、wikipedia東京大学http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6)では、年表で

1921年7月 航空研究所を設置

とあります。しかし、1921年7月は航空研究所設置ではなく、航空研究所官制(大正10年勅令第310号)の公布施行です。それ以前は東京帝国大学官制(明治30年勅令第210号)にて航空研究所について規定されていました。

東京帝国大学官制(大正7年勅令第270号による改正後の時点)
第15条ノ4【1項】 東京帝国大学附属航空研究所ニ航空研究所長ヲ置キ工科大学教授又ハ理科大学教授ヨリ文部大臣之ヲ補ス

 
それはともかく、ISASのルートで、機関として宇宙を研究する組織が設立されたのは、昭和39年です。航空研究所が宇宙航空研究所に発展しました。

【昭和39年改正前】
航空研究所 航空に関する学理及びその応用の研究
【昭和39年改正後】
宇宙航空研究所 宇宙科学、宇宙工学及び航空に関する学理及びその応用の総合研究

一方、航空宇宙技術研究所(NAL)はもともと科学技術庁総理府)の所管でしたから、今回の記事でのJAXA内閣府移管は、いわば古巣に帰る形になります。しかもかつて航空技術研究所を設置した理由は、「航空関係には多額の金が必要だから1か所で研究を行う方が良い」というものであり、さらには各省庁等がそれぞれわかれて研究施設を保有する状態が「セクト的」だという指摘もありました。このあたりは今もそれほど状況は変わっていないようです。

第22回国会参議院内閣委員会第14号(昭和30年6月17日)
○松原一彦君 これと同じような、航空技術研究所が一カ所に集中するためというお話でありましたが、今あります既設のものはどういう種類のものがあるのでございましょうか、お聞かせ願いたいと思います。どこにどういうものがありますか。
○政府委員(田中榮一君) お答えいたします。現在ございまする航空技術の研究機関と申しますのは、非常にもう貧弱なものでございまして、これはいずれもその他の技術面も研究いたしておりまして、航空専門の研究所といたしましては現在一カ所もございませんが、ただいろいろの技術研究をしておりまするのが、一部航空の技術も研究しておるというのが現在の実情でございます。現在どういうところにあるかと申しますると、まず通商産業省におきましては、工業技術院機械試験所第三部というのがございます。それから運輸省関係といたしましては、運輸抜術研究所航空部というのがございます。それから文部省関係としましては、東京大学理工学部研究所、それから東京大学工学部の航空学科、これは今年から初めて航空学科が新たに設けられたのでございます。それから防衛庁関係といたしましては、技術研究所第六部、以上六カ所ございまするが、これは先ほども申し述べましたごとくに、航空専門の研究ではないのでございまして、いろいろな技術の研究の中に、航空を一部研究しておるという程度でございまして、その研究所の機構もきわめて小型でございまして、大体十名内外のスタッフを擁して研究しておる、こういう実情でおります。
○堀眞琴君 そうしますと、航空研究所でやられる研究内容というのは、原理的な部門と、それから技術的な面と、こう二つあるように思われる。いずれも大切な部門ですから、それは研究しなければならぬと思いますが、その原理的な面について、あるいは技術的な面について、今の松原委員へのお答えによりますと、ほかでもそういうような研究をやっている。原理的な面では特に東京大学でやっている、あるいは理工学研究所と言うのですか、理工研究所ですか、そういうところに緊密な関係があるでしょうし、それから技術的な面では運輸省関係、あるいはその他の研究所とも相当密接な関係があると思うのですが、従来、ともすると、そういう研究機関が運輸省にもある、総理府にもあるというので、それぞれセクト的になりまして、そうして研究所のいろいろな成果その他についての連絡であるとか、あるいはまた研究上のそうしたいろいろの便宜等について少しも連絡がないというのが従来の実情であったと思うのです。中央の航空技術研究所を作るからには、大学あるいはその他の官庁のそういう同じような研究所、あるいは民間の研究機関とも緊密な連絡がなければならぬと思う。そうしないと無意味であると思うのですが、その点についてはどのようにお考えになっているか。
○政府委員(田中榮一君) 実はこの中央の技術研究所ができますまでのいきさつにつきまして、ちょっと先ほど申し述べましたのですが、やはりお話のようにセクト的の関係が相当強くありまして、それぞれなるべくなら自分の方に航空研究所を作りたいという要求か非常に熾烈でございましたので、ここ三年間、これらにつきまして関係省において十分に協議いたしました結果、最後の結論としまして、先般航空技術審議会の方からも、できるなら無駄な経費を各所に使わずに、一カ所に年中して立派な施設を作ることが一番必要である、こういうような答申もございまして、この答申とともに、各省におきましてもいろいろと今後のことにつきまして十分御反省願いまして、ようやくこの中央航空研究所の方へ一カ所に施設をまとめて、これをお互いに共用するというところの結論に達しまして、まあ大体各省もそういう空気が醸成されましたので、今後はなるべくこれを中心にしてお互いに共用して、相互に技術を向上して行こうじゃないか、それから単に各省のみならず、民間の航空製作会社の関係も、これは一つなるべく共用して行こうじゃないか、こういう空気がだいぶ最近は強くなって参りまして、実はここまで持ってきたのでございますので、今後もさような空気によって一つこれを運営して行くことがもっとも必要じゃないかと考えております。

しかし航空技術研究所の発足後も東大航空研究所は残ったわけですから、文部省もしたたかです。
そんなわけで、科学技術庁宇宙研究を行う根拠となる科学技術庁設置法(昭和38年法律第45号による改正後)には、

 15の2 宇宙の利用を推進すること。(他の行政機関の所掌に属することを除く。)

という、弱気なカッコ書きが付け加えられました。