運動量

運動量(Log of ROYGBさま(id:ROYGB:20080407#mv))

ちなみに運動量というのは質量と速度の積で表される物理量ですが、どうも運動量の方が質量や速度よりも基本的な物理量だというのも何かで読んだことがあります。運動量保存の法則は、エネルギー保存の法則などのように基本的な原理だということです。なんでそうなのかについてはよくわかりません。

運動量をそのように把握したのは、デカルトだったはずです。「一定の運動量が宇宙において保存される」のが運動量保存則であり、粒子力学的な世界観と神の意思による法則という文脈で理解されるものです。デカルトが定義する「速度」はベクトルではなくスカラーですから、現在でいう運動量保存則は、ホイヘンスのものまで待たなければいけませんが。
ただ、デカルトは「質量と速度の積」に対して、もう少し強い意味づけをしていたようです。

デカルトはmv(質量×速度)を<運動の量>と名づけ、これを<力>と定義しました。それに対して、ライプニッツはmv^2(質量×速度の2乗)を<活力>と名づけて、デカルトを批判しました。
しかし、現在の定義では、
mv(質量×速度)は<運動量>を表し、
mv(質量×速度)=f×t(力×時間)
mv^2(質量×速度の2乗)は<運動エネルギー>であり、
mv^2(質量×速度の二乗)=f×s(力×距離)
どちらも力ではありません。
【山下芳樹「高校物理“検定外”教科書」148ページ】

つまり、デカルトにとって、mやvよりmvのほうが本質的であったのです。
 
現在でも、位置(座標)と運動量は正準共役量ですから、その意味では、速度などよりも「基本的な」量です*1。この場合、国際単位系SIの基本単位からみると質量(kg)>速度(m/s)>運動量(kg*m/s)であることとの対比が面白いですね。
ハミルトンの運動方程式では、運動量が保存量であるため、変数は、速度でなく運動量です。状態が保存量によりあらわされるから、量子力学のほうでよく用いられる概念です。ROYGBさんが読んだ何かは、むしろこっちでしょうか。

*1:正確な記述ではありませんが。