新指導要領案(2)

前回(id:ameni:20080220)のつづき。今回は、電磁気分野についてみてみます。
まずは、小学校の内容からです。

〔第3学年〕
(4) 磁石の性質
磁石に付く物や磁石の働きを調べ,磁石の性質についての考えをもつことができるようにする。
 ア 物には,磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があること。
  また,磁石に引き付けられる物には,磁石に付けると磁石になる物があること。
 イ 磁石の異極は引き合い,同極は退け合うこと。
(5) 電気の通り道
乾電池に豆電球などをつなぎ,電気を通すつなぎ方や電気を通す物を調べ,電気の回路についての考えをもつことができるようにする。
 ア 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。
 イ 電気を通す物と通さない物があること。
 
〔第4学年〕
(3) 電気の働き
乾電池や光電池に豆電球やモーターなどをつなぎ,乾電池や光電池の働きを調べ,電気の働きについての考えをもつことができるようにする。
 ア 乾電池の数やつなぎ方を変えると,豆電球の明るさやモーターの回り方が変わること。
 イ 光電池を使ってモーターを回すことなどができること。
 
【内容の取扱い】(3)のアについては,直列つなぎと並列つなぎを扱うものとする。
 
〔第5学年〕
(3) 電流の働き
電磁石の導線に電流を流し,電磁石の強さの変化を調べ,電流の働きについての考えをもつことができるようにする。
 ア 電流の流れている巻き線は,鉄心を磁化する働きがあり,電流の向きが変わると,電磁石の極が変わること。
 イ 電磁石の強さは,電流の強さや導線の巻き数によって変わること。
 
〔第6学年〕
(4) 電気の利用
手回し発電機などを使い,電気の利用の仕方を調べ,電気の性質や働きについての考えをもつことができるようにする。
 ア 電気は,つくりだしたり蓄えたりすることができること。
 イ 電気は,光,音,熱などに変えることができること。
 ウ 電熱線の発熱は,その太さによって変わること。
 エ 身の回りには,電気の性質や働きを利用した道具があること。

現行では6年生で学ぶ電磁石が、新課程では5年生へ移行されます。そして新課程の6年生では新たに、エネルギーを学びます。私が予想していた以上に、エネルギーの扱いは大きいようです。電磁石が5年生に降りているのは、実に昭和33年施行の指導要領以来です。「発電機を使う」とありますが、もちろん電磁誘導の仕組みを理解させるのではなく、エネルギー変換を扱うという趣旨でしょう。それほど理解困難な分野というわけでもないのですが、学習量は多そうです。
つづいて、中学校の内容です。

(3) 電流とその利用
電流回路についての観察,実験を通して,電流と電圧との関係及び電流の働きについて理解させるとともに,日常生活や社会と関連付けて電流と磁界についての初歩的な見方や考え方を養う。
ア 電流
 (ア) 回路と電流・電圧
回路をつくり,回路の電流や電圧を測定する実験を行い,回路の各点を流れる電流や各部に加わる電圧についての規則性を見いだすこと。
 (イ) 電流・電圧と抵抗
金属線に加わる電圧と電流を測定する実験を行い,電圧と電流の関係を見いだすとともに金属線には電気抵抗があることを見いだすこと。
 (ウ) 電気とそのエネルギー
電流によって熱や光などを発生させる実験を行い,電流から熱や光などが取り出せること及び電力の違いによって発生する熱や光などの量に違いがあることを見いだすこと。
 (エ) 静電気と電流
異なる物質同士をこすり合わせると静電気が起こり,帯電した物体間では空間を隔てて力が働くこと及び静電気と電流は関係があることを見いだすこと。
 
イ 電流と磁界
 (ア) 電流がつくる磁界
磁石や電流による磁界の観察を行い,磁界を磁力線で表すことを理解するとともに,コイルの回りに磁界ができることを知ること。
 (イ) 磁界中の電流が受ける力
磁石とコイルを用いた実験を行い,磁界中のコイルに電流を流すと力が働くことを見いだすこと。
 (ウ) 電磁誘導と発電
磁石とコイルを用いた実験を行い,コイルや磁石を動かすことにより電流が得られることを見いだすとともに,直流と交流の違いを理解すること。
 
(7) 科学技術と人間
エネルギー資源の利用や科学技術の発展と人間生活とのかかわりについて認識を深め,自然環境の保全と科学技術の利用の在り方について科学的に考察し判断する態度を養う。
ア エネルギー
 (ア) 様々なエネルギーとその変換
エネルギーに関する観察,実験を通して,日常生活や社会では様々なエネルギーの変換を利用していることを理解すること。
 (イ) エネルギー資源
人間は,水力,火力,原子力などからエネルギーを得ていることを知るとともに,エネルギーの有効な利用が大切であることを認識すること。
 
【内容の取扱い】(1)  内容の(1)から(7)までのうち,内容の(1)及び(2)は第1学年,内容の(3)及び(4)は第2学年,内容の(5)から(7)までは第3学年で取り扱うものとする。
 
(4) 内容の(3)については,次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの(ア)の「回路」については,直列及び並列の回路を取り上げ,それぞれについて二つの抵抗のつなぎ方を中心に扱うこと。
 イ アの(イ)の「電気抵抗」については,物質の種類によって抵抗の値が異なることを扱うこと。また,二つの抵抗をつなぐ場合の合成抵抗にも触れること。
 ウ アの(ウ)については,電力量も扱うこと。その際,熱量にも触れること。
 エ アの(エ)については,電流が電子の流れであることを扱うこと。
 オ イの(イ)については,電流の向きや磁界の向きを変えたときに力の向きが変わることを扱うこと。
 カ イの(ウ)については,コイルや磁石を動かす向きを変えたときに電流の向きが変わることを扱うこと。
(8) 内容の(7)については,次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの(ア)については,熱の伝わり方を扱うこと。また,「エネルギーの変換」については,その総量が保存されること及びエネルギーを利用する際の効率も扱うこと。
 イ アの(イ)については,放射線の性質と利用にも触れること。

これをみると、かなり内容が増えています。並列回路の合成抵抗、電力量と熱量、直流と交流、放射線などが扱われることとなりますが、これらのいくつかは、旧課程よりもさらに以前の指導要領からの復活となります。ちょうど、現行の高等学校の理科総合Aの内容がかなり降りてきた感じです。
エネルギーの概念は、今回の指導要領改定で内容を増やす目玉となっていますから、エネルギーと密接に関連する電磁気の分野も、内容が増えているという状況のようです。