新指導要領案(1)

先日、新課程の指導要領案が文科省から公表されました(小学校中学校)。今回は、天文分野についてみてみます。
まず小学校についていえば、現行では、3年生で日なたと日かげ、4年生で太陽と月、星の動きを扱いました。新課程では、それらに加えて6年生で、太陽と月の動きに触れます。

〔第3学年〕
(3) 太陽と地面の様子
日陰の位置の変化や,日なたと日陰の地面の様子を調べ,太陽と地面の様子との関係についての考えをもつことができるようにする。
 ア 日陰は太陽の光を遮るとでき,日陰の位置は太陽の動きによって変わること。
 イ 地面は太陽によって暖められ,日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあること。
 
【内容の取扱い】(3)のアの「太陽の動き」については,太陽が東から南を通って西に動くことを取り扱うものとする。また,太陽の動きを調べるときの方位は東,西,南,北を扱うものとする。
 
〔第4学年〕
(4) 月と星
月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きについての考えをもつことができるようにする。
 ア 月は日によって形が変わって見え,1日のうちでも時刻によって位置が変わること。
 イ 空には,明るさや色の違う星があること。
 ウ 星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置が変わること。
 
〔第6学年〕
(5) 月と太陽
月と太陽を観察し,月の位置や形と太陽の位置を調べ,月の形の見え方や表面の様子についての考えをもつことができるようにする。
 ア 月の輝いている側に太陽があること。また,月の形の見え方は,太陽と月の位置関係によって変わること。
 イ 月の表面の様子は,太陽と違いがあること。
 
【内容の取扱い】(5)のアについては,地球から見た太陽と月の位置関係で扱うものとする。

みてみると、6年生で扱う太陽の位置よりも以前に、太陽の日周運動をどこで扱うのでしょうか。というのも現行では、指導要領のうえでは4年生では「月と星」を扱うこととなっていますが、教科書では4年生で太陽の日周運動もやや詳しく扱っていたのです。この日周運動の扱いが新課程ではどのようになるのかは、明らかではありません。
一方、6年生での「月と太陽」では、月や太陽の表面、位置関係を扱うようです。これは旧課程での内容とよく似ています。ただ、月と太陽の位置関係といえば日食・月食が連想されますが、それは扱わないようです。ただ、太陽との位置関係をもとにして月の満ち欠けを考える、というのは現行でも4年生の教科書で触れられています。新課程の6年生では、それを超える内容を扱い、かつ、日食や月食には触れないとしたら、ここで扱う内容は非常に少なくなってしまいます。このあたりはよくわからないところです。
 
次に中学校についてみてみます。

(6) 地球と宇宙
身近な天体の観察を通して,地球の運動について考察させるとともに,太陽や惑星の特徴及び月の運動と見え方を理解させ,太陽系や恒星など宇宙についての認識を深める。
 
ア 天体の動きと地球の自転・公転
 (ア) 日周運動と自転
天体の日周運動の観察を行い,その観察記録を地球の自転と関連付けてとらえること。
 (イ) 年周運動と公転
星座の年周運動や太陽の南中高度の変化などの観察を行い,その観察記録を地球の公転や地軸の傾きと関連付けてとらえること。
 
イ 太陽系と恒星
 (ア) 太陽の様子
太陽の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,太陽の特徴を見いだすこと。
 (イ) 月の運動と見え方
月の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,月の公転と見え方を関連付けてとらえること。
 (ウ) 惑星と恒星
観測資料などを基に,惑星と恒星などの特徴を理解するとともに,惑星の見え方を太陽系の構造と関連付けてとらえること。
 
【内容の取扱い】(1)  内容の(5)から(7)までは第3学年で取り扱うものとする。
(7) 内容の(6)については,次のとおり取り扱うものとする。
 ア アの(イ)の「太陽の南中高度の変化」については,季節による昼夜の長さや気温の変化にも触れること。
 イ イの(ア)の「太陽の特徴」については,形,大きさ,表面の様子などを扱うこと。その際,放出された多量の光などのエネルギーによる地表への影響にも触れること。
 ウ イの(イ)については,日食や月食にも触れること。
 エ イの(ウ)の「惑星」については,大きさ,大気組成,表面温度,衛星の存在などを取り上げること。その際,地球には生命を支える条件が備わっていることにも触れること。「恒星」については,自ら光を放ち,太陽もその一つであることを扱うこと。その際,恒星の集団としての銀河系の存在にも触れること。「太陽系の構造」における惑星の見え方については,金星を取り上げ,その満ち欠けと見かけの大きさを扱うこと。また,惑星以外の天体が存在することにも触れること。

ざっと見てみると、新課程は、現行と旧課程のちょうど間をとったような形になっているようです。新課程では、惑星のようすや月の公転、日食・月食を扱いますが、外惑星の見え方などは扱わないようです。
あと、「惑星以外の天体」との記述が気になります。太陽系で太陽・惑星・衛星以外といえば、小惑星・彗星あたりでしょうか。あるいは準惑星かもしれませんが、それは日本学術会議で「積極的に使用することは推奨しない」と言われていたはずです。