指導要領・理科

前回(id:ameni:20071031)のつづき。
以前(id:ameni:20070930)私は「指導要領が改定されてもそれほど学習内容は増えない」と書きましたが、しかし中教審の結論によれば、小中学校の学習量はけっこう増えるようです(中学理科では30%を超えます)。
というわけでここで、内容の大幅増があった場合の、理科の学習内容の変化を考えてみます。

天文分野

■小学校
現行課程(平成元年告示)では、3年生で太陽の動きを扱い、4年生で月と星座を扱います。ここで、内容が増えるとなると、この2年だけでは収まりきらないことと、そして現行ではこの次に天体分野を学習するのが中学3年生なので間隔が空いてしまうことを考えると、新課程では6年生あたりでさらに天体分野を学習することになると思います。前回の私の検討では「4年生の内容の一部を6年生に移行」と書きましたが、ここではそうならずに、「6年生では新出単元のみを習う」という場合を考えてみます。
〔第6学年〕
月と星座を扱います。月に関しては、1か月の満ち欠けの様子を観察事実として扱います。月表面の様子を太陽と比較し、太陽は恒星であるが月は太陽の光を反射していることを習います。恒星に関しては、南天と北天の星の動きの結果を比較します。天体名として、各季節の代表的な星座と北極星、天の川あたりを学習します。また、星の明るさと色の相違にふれます。
 

■中学校
おそらく新課程では、天文分野を学習する学年は下がることになるかもしれません。というのも、イオンや仕事、遺伝法則がおそらく3年生で扱われることになるので、この学年の内容が過密になるからです。ここでは2年生で学ぶと仮定します。
〔第2学年〕
月と太陽系惑星が新たに学習内容として追加されます。地球の自転・公転・地軸の傾きと、天体の運動・見え方とを関連づける、という方向性が復活する可能性があります(でないと、観測事実の羅列だけで項目を増やすのには限界があります)。こうなると、日食・月食の原理、外惑星の見え方などが学習内容に含まれることになります。高等学校の理科総合Bの内容の一部が中学校に移行するという感じです。

人体分野

■小学校
現行課程では、5年生で発生(胎生)、6年生で呼吸、消化、循環のあらましについて学習します。新課程では「人体のつくり」を新しく扱うことになるので、この2年分だけでは収まらなくなります。おそらくは、低学年でもこの分野にふれることになるでしょう。なお、旧課程では3年生で器官・つくり(目や耳、骨など)にふれられていました。
〔第3学年〕
器官とその役割について習います。ただ、光や音について習っていないうちからレンズや鼓膜について詳しく触れるわけにもいかないので、もし低学年でこれについて触れるのであれば、おそらく概要にとどまるはずです。また、骨や筋肉について習うことにより、体の動き方を理解させます。
〔第5学年〕
ここでは発生を扱います。動物の発生と比較してヒトは母体内で成長する、ということにふれます。現行課程と比較して、それほど内容は増えないと思います。
〔第6学年〕
人体のはたらきについて習います。この分野は、実は現行課程と旧課程とで、習う内容にそれほど差がありません。ただ今回の方針として、家庭科で「栄養素について扱う」としていますから、それを受けて、理科でも内容が増える可能性があります。そうなると、旧々課程(昭和52年告示)のレベルまで学習量が増えることになります。当時の教科書では、唾液の消化作用や心臓のつくりまで、知識事項として掲載されています。
 
■中学校
理科の学習内容が増えるといっても、生物では進化や遺伝のような「ホットな」話題が主に増えるようです。なので、人体のしくみについては、それほど詳細に扱われることはないでしょう。
〔第2学年〕
各器官のつくりと機能について、現行よりももう少し詳しく扱うことになると思います。この分野は、旧課程からの削減内容があまりなかったところであり、逆にいえば、現行課程においても重要視されているために削減されなかったところです。ですので、各項目での知識量が多少増えるにとどまり、たとえば扱う消化酵素の種類が増えたり呼吸器官のつくりにふれるなどの変化がある程度でしょう。