小中の理科「選択」を廃止 ゆとり教育見直しで

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070914-00000953-san-soci
 
指導要領を見直して学習内容を増やす、と息巻いているようですが、選択項目を廃止してすべて必修にしたら、その時点で1割程度は学習内容が増えるわけで、新しい項目を追加する余地はそれほど多くはないはずです。
でもって、

 削りすぎた学習内容も復活。現在は中学で学んでいる「太陽と月」は小学で学ばせる。「遺伝の規則性」「電力量」「力の合成と分解」などは高校から中学に戻す。

とありますが、月は中学校では習わないはずです。

中学校学習指導要領(平成10年12月14日文部省告示第176号)
【第2章 各教科/第4節 理科/第2 各分野の目標及び内容/〔第2分野〕/2 内容】
(6) 地球と宇宙
 身近な天体の観察を通して,地球の運動について考察させるとともに,太陽の特徴及び太陽系についての認識を深める。
ア 天体の動きと地球の自転・公転
(ア) 天体の日周運動の観察を行い,その観察記録を地球の自転と関連付けてとらえること。
(イ) 四季の星座の移り変わり,季節による昼夜の長さ,太陽高度の変化などの観察を行い,その観察記録を地球の公転や地軸の傾きと関連付けてとらえること。
イ 太陽系と惑星
(ア) 太陽,恒星,惑星とその動きの観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,太陽の特徴を見いだし,恒星と惑星の特徴を理解するとともに,惑星の公転と関連付けて太陽系の構造をとらえること。

しばらく前(id:ameni:20060504#1146674238)に、天文分野の学習内容の変遷みたいなものについて書きましたが、現行課程ではむしろ月は、小学校での学習内容です。
中学校では、日周運動・年周運動・惑星・恒星・銀河系を扱いますから、衛星である月は(月の満ち欠けは日周運動でも年周運動でもない)全く扱われないことになります。
教科書を数冊見てみましたが、発展項目で触れられている程度でした。
一方、小学校では、3年生で太陽の日周運動、4年生で月を扱います。

小学校学習指導要領(平成10年12月14日文部省告示第175号)
【第2章 各教科/第4節 理科/第2 各学年の目標及び内容/〔第4学年〕/2 内容】
C 地球と宇宙
(1) 月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きについての考えをもつようにする。
 ア 月は絶えず動いていること。
 イ 空には,明るさや色の違う星があること。
 ウ 星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置が変わること。
【3 内容の取扱い】
(4) 内容の「C地球と宇宙」の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。
 ア 月の動きについては,三日月や満月などの中から二つの月の形を扱うこと。
 イ ウの「星の集まり」については,二つ又は三つの星座を扱うこと。

というわけで、ヤフー産経の『現在は中学で学んでいる「太陽と月」は小学で学ばせる。』という記述はよく意味がわからなかったのですが、まだ文部科学省のサイトでもこの素案はアップされていないようなので、詳細はよくわかりません。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/029/07090310/003.htm
では、

(2) 教育内容の改善(基礎的な知識・技能の確実な定着の重視)
(具体例)
(1)国語の美しい表現やリズムを身に付けるといった観点から小学校における易しい古文や漢文の音読や暗唱を重視、漢字指導の充実(国語)
(2)都道府県や世界の主な国々の位置と名称などの確実な習得(社会)
(3)学年間等で反復(スパイラル)する教育課程を構成することによる計算能力などの確実な習得(算数)
(4)エネルギー、粒子、生命、地球などの科学の基本的な見方や概念を柱とした教育内容の充実(理科)

となっていて、これが「都道府県名を暗記させる」「計算力重視」と報道されているわけですが、理科についてもエネルギーの概念が小学校で登場しそうな勢いになっているようです。