府と市をあわせて都。

別のことを書こうと思っていたのですが、その前に。
キーワード:東京市http://d.hatena.ne.jp/keyword/%c5%ec%b5%fe%bb%d4)について、間違いがある、というわけではないのですが、気になった点をいくつか書いてみます*1

1888(明治21)年から1943(昭和18)年まで東京(当時は東京府)に存在していた市。

1888年は市制(明治21年法律第1号)が公布された年ですが、この時点では市制はまだ施行されていない(施行は翌年4月)うえに、東京が市に指定されたのは1889年2月(内務省告示第1号)ですから、1888年の時点では東京は市ではなかったというべきでしょう。
 

1888(明治21)年、東京府の中心部を15区に分けて、東京市が設置された。

東京市の発足時点で区が15あったというのはそのとおりですが、しかしここで挙げられている15区が発足したのは1878年(郡区町村編制法(太政官布告第17号))の頃です。「東京府の中心部を15区に分けて、東京市が設置された。」とするとその時点で区分けがされたようにとられますから、「東京府の中心部の15区を市域として、東京市が設置された。」くらいにするほうがいいかもしれません。
これらの点は、ウィキペディア東京市http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%B8%82)のほうが記述は正確です。
 
ところが、都道府県庁所在地の話題になると、ちょっと事情が変わります。
たとえば千葉県の県庁所在地が「千葉市」、栃木県の県庁所在地が「宇都宮市」だというのはそのとおりなのですが、東京都の県庁(都庁)所在地は、「東京」という記述(学校の参考書など)と、「新宿区」という記述(新宿区の見解)の2とおりがあります。それぞれの主張には根拠があり、また欠点もあります。「東京」とする記述に対しては、「23区を指しているのであれば、23区のみを管轄とする自治体は存在しない。東京都を指しているのであれば、同一のものを反復しているだけで答えになっていない。」という反論がありますし、「新宿区」とする記述に対しては、「他の道府県の県庁所在地は市なのに、なぜ市と対等ではない区が所在地となるのか。」と反論されます。
でもって、はてなのキーワード:県庁所在地(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A9%C4%A3%BD%EA%BA%DF%C3%CF)には、脚注で

「東京」と表記されているものもある

としていますが、ウィキペディア都道府県庁所在地(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E9%81%93%E5%BA%9C%E7%9C%8C%E5%BA%81%E6%89%80%E5%9C%A8%E5%9C%B0)では、その点について何も触れずに新宿区を所在地としています。
「県庁所在地はどこかという問いに対して、その下部の行政単位を答えるのは当然じゃないか」と考えたのでしょうが、でしたら、同じ理由で、バチカン市国の首都に「バチカン」と答えるのに対しても反論すべきでしょう。さて、何と答えますか*2

*1:ついでに、キーワード:大阪市の項目を見てみると、『北区(大阪市北区) 』のように、他市に同名の区がある場合には、カッコ書きで(大阪市〜区)と表記しています。ところが、鶴見区は、横浜市に同名の区があるにもかかわらずカッコ書きされていないようです。このあたりがどうも不徹底なようです。

*2:バチカン市国は一つの市で構成されています