学校教育での電磁気学の扱い

前回(id:ameni:20060501#1146415049)のつづき。

(2)中学校での学習内容

電磁気分野は、現行課程、旧課程、旧々課程のいずれも、おおむね2年生で学びます。
■静電気
現行課程でだけ学ぶ学習範囲です。電気の力や電流への導入の役割を持つように扱われます。旧課程・旧々課程では、力学分野で帯電体相互の力の作用を扱います。
 
■電流・電圧・抵抗
直流・並列回路での電流・電圧・抵抗の値を求める方法を学習します。現行課程と旧課程とでは内容に大差がありませんが、旧々課程では合成抵抗を扱うなど、やや深く学習します。
 
■磁界・電磁誘導
電流と磁界、力の関係を学習します。現行課程と旧課程とでは内容に大差がありませんが、旧々課程ではレンツの法則を扱うなど、やや深く学習します。
 
■電力と発熱
電流と電力、発熱量の関係を学習します。電力量は、現行課程では扱いませんが旧課程・旧々課程では扱います。
 
■直流と交流・真空放電
旧課程・旧々課程のみで扱われている分野です。真空放電は、電流が電子の流れであることを知るための分野ですが、電子の扱いが大幅に制限された現行課程では、この分野が削除されたのはやむをえません。
 
■指導要領についての検討
現行課程では、回路や電磁誘導、電力の分野で、相当内容が軽減されています。計算問題や方向を求める問題が少なくなる、という傾向は一貫しています。その一方で、直流・交流や電力量の知識が削られているのが気になります。これらの内容はいわゆる総合的理科*1に移行されていますが、総合的理科の内容はすべての生徒が学ぶものではありません。そのために、家庭で使用する電気が交流であることや、電気料金の基礎となる電力量の概念についての知識を、ひろく知ることができなくなってしまっています。
定量的問題をオームの法則と発熱量に絞ったのはよいですが、知識についてはもっと事項を増やしてもよいかな、と思います。
 
■学習に際して
まずは、電流・電圧・電力などの用語を正確に理解することが大切です。回路の計算は、比例・反比例程度の数学の知識があれば容易に解けるので、直列・並列の性質を確実に把握することが重要になってきます。市販の標準的な問題集を繰り返して基礎力をつければ十分でしょう。
磁界や電磁誘導の内容が難しいと感じたら、左巻検定外教科書あたりを読むとよいでしょう。記述内容がやや高度ですが、読みやすいです。
 
■受験に際して
この分野では、公立はともかくとして、私立の上位校になるとかなり難易度の高い問題が出題されます。開成高(東京)でも、非常に高い頻度で出題されています。対策としては、まずは、旧課程教科書や左巻検定外教科書など、範囲外の知識を平易に記述しているものをひととおり読んでおくことです。

*1:「理科基礎」「理科総合A」「理科総合B」をあわせて指す。