学校教育での天文学の扱い

前回(id:ameni:20060428#1146165472)のつづき。

(2)中学校での学習内容

天文分野は、現行課程では3年生で、旧課程と旧々課程では1年生で学びます。
■日周運動・年周運動
天体の運動を、地球の自転・公転や地軸の傾きと関連づけて学習します。この分野の内容について指導要領ごとの変化はあまりありません。ただ、旧々課程では「天体の運動と地球の運動との関連づけ・推論を重視する」という方針だったのが、その後の課程では徐々に「観察から事実を知る」という方向に変化しています。
 
■太陽と太陽系惑星・恒星
現行課程では、太陽の大きさ・太陽表面の様子などについては詳細に学習しますが、惑星については比較的浅い内容にとどまり、また恒星については「太陽系の外にある自ら光る星」という程度を扱うのみです。一方、旧課程や旧々課程では、それぞれの惑星の特徴について詳しく学習します。また恒星についても、「明るさ・色の違いは、表面温度や地球からの距離に関係している」という点にまで踏み込んで扱います。
 
■指導要領についての検討
現行課程では、小学校で学ばなかった日周運動・年周運動の詳しい内容が移行して編入された一方、惑星や恒星については大半が高等学校に移行しました。そのため、以前の課程と比較すると、全体の章立てはそれほど変化がないのですが具体的な学習内容については大きな変化があるように思えます。
観察から得られる考察を重視する、という現在の理科教育の基本的立場からすると、観察で得られる知識に限りがある天文分野は、どうしても内容削減の流れに向かってしまいます。ただ、惑星や恒星の知識というのは、たとえばイオンや原子ほどに必須で重要な内容だとはいえないので、この分野が削減されるのは(学習時間に限りがある以上は)仕方がないといえます。
 
■学習に際して
中学3年になれば、数学でも立体図形を本格的に扱うことになります。そうなると、天体の運動レベルの内容は容易に把握できるようになります。中学理科では天文はそれほど難しい分野ではなくなってきます。また中学程度の知識のレベルですと、それぞれの惑星の様子などは単発的な知識であり論理性に乏しいので、ともすれば暗記中心の学習になりがちになります。教科書の内容を理解するのであれば、詳細な知識にそれほど深入りすることなく教科書や参考書(左巻検定外教科書など)を読み込むという程度で十分でしょう。
 
■受験に際して
公立高校入試では教科書の内容がストレートに出題される一方で、私立上位校でも、それほど難易度の高い問題は出題されない分野です。
開成高(東京)あたりでも、出題率があまり高くない上に、他分野と比べると要求されている知識はどちらかといえば標準的です。