キログラム原器とアンペア定義(5・完)

前回(id:ameni:20051111)のつづき。
 
平成4年改正によって、単位の定義は政令によってなされることになりました。以前と比べて扱う単位の数が多くなったので、わざわざ定義を法律で扱うのは確かに煩雑ですから、これについては適切だと思います。
尺貫法・ヤードポンド法との並存については、坪などのように日本の建築自体が尺貫法になじんでいる例と異なり、質量についてはキログラムでほぼ不便はないでしょう。国会答弁では、相撲取りの重量がキログラムより貫で表記されるほうが風情がある、という発言があり、また一部の格闘技では選手の体重をポンドで表す例もある、としています。
しかしこのような例は挙げればきりがないわけで、例えば理科教育の場面では熱量はジュールよりもカロリーのほうが生徒に理解されやすかったりするのです。それでも、SI系とメートル法という流れは、もはや止められないでしょう。
 
また、日本の法令だけではどうにもならないことですが、キログラムは、あいかわらず原器を基準としています。しかし原器はその誤差も大きいです。空気中の水分などの吸着物の質量も原器の質量として含まれるということもあり(飽和状態での蒸発・凝固の平衡を考えると、吸着物を含めるほうが適切なのかもしれませんが)、年々わずかずつ原器の質量が増えているという報告もあります。さらに、破損のおそれもゼロではありません。日本ではアンペア標準器が関東大震災で焼失した例があり、キログラム原器とて、暴動等の際に破壊される可能性があります。そろそろキログラムも、メートルと同様に普遍物理量を基準にすることが望ましいと考えます。