盲腸線

はてなキーワードの「盲腸線」の定義では、

起点・終点のどちらかが他の鉄道路線と接続しておらず、あたかも盲腸のように見える路線(又は路線の一部)のこと。

とあります。でもこれでは、函館本線(そのほか北海道の多くの路線)や関西本線予讃線鹿児島本線などがことごとく「盲腸線」になってしまいます*1。また、はてなキーワードではその点の予防線を張っていて、

そのため、「短い」「列車の運行本数が少ない(又は乗客が少ない)」ことを「盲腸線」の条件とする人もいる。

との文章もありますが、しかしそれでも、五日市線桜島線のような単に短いだけの路線*2や、名松線岩泉線のような乗客が少ない路線*3盲腸線になってしまいます。
鉄業界での盲腸線(最狭義)っていうのは、東海道本線の大垣〜美濃赤坂間とか東北本線の岩切〜利府間のように、「ある線区の支線である」というのが必要条件だったはずです。小腸あっての盲腸ですから、幹線あっての盲腸線、というわけです*4
 
でもって、特定地方交通線廃止の時には、「廃止する路線は、線名ごとに決める」という方針であったため、鍛冶屋線のような実態に合わない廃止があった一方で、盲腸線はことごとく生き残りました。盲腸線は幹線と同じ線名ですから。
ところがJRが発足してしばらくすると、廃止する路線をJRが自由に決定できるようになりました。そうするといよいよ盲腸線も廃止されるようになり、砂川〜上砂川間(函館本線)と南大嶺〜大嶺間(美祢線)が既に廃止されています。次に消えたのは兵庫〜和田岬間です。廃止されなかったものの地下鉄が伸びたので「起点・終点のどちらかが他の鉄道路線と接続しておらず」の条件を満たしませんから、盲腸線にならなくなりましたからね。

*1:「又は路線の一部」とあるから、これらの線区の一部分(たとえば函館本線の函館〜五稜郭間)のみが「盲腸線」に該当するのだ、という考え方も成り立たないわけではないですが、これだと「盲腸線=行き止まりの路線」(最広義の盲腸線)ということになってしまって、単に「乗破に不便」程度の意味しかもたなくなります。まあ、それは重要な意味かもしれませんけれども、函館駅などは「行き止まり」というよりは(実質的意味でも)「始点」と呼ぶのがふさわしいでしょう。

*2:広義での盲腸線

*3:狭義での盲腸線

*4:とはいうものの、ウィキペディア・特定地方交通線では、「実質的には特定地方交通線とほぼ同等の輸送実態でありながら幹線系線区の一部(いわゆる「名無し支線」)として扱われたため、特定地方交通線に選定されなかった線区がある。」という説明があります。「名無し支線」ですか。なるほど。たしかに、はてなキーワードを含めてたいていの人が「盲腸線=行き止まりの路線」と考えているようですから、ここは私のほうが考えを改めるべきなのかもしれません。しかしそれだと、「盲腸線」という言葉に感じられる甘い感触がなくなるのですよ。