衆議院解散と内閣不信任決議案

衆議院本会議で、解散詔書が朗読されました。
ところで、その直前に民主党議員から内閣不信任決議案が提出されていますが、こういう流れは珍しいのかなと思って調べてみました。すると、いくつか前例が見つかりました。
内閣不信任決議案が可決されてその直後に衆議院を解散する、というのは有名なのですが(戦後4回)、内閣不信任決議案が提出された直後に衆議院が解散されるのは、戦後3回ありました*1
 
ちょっと仕組みを説明しますと、解散確実となった衆議院本会議で、野党が内閣不信任決議案を提出すると、いちおう(異議が無ければ)その決議案は議題にあがり、審議が始まります。ところが解散詔書朗読は決議案審議に優先するために、審議が始まるやいなや、解散が宣言される、というわけです。いずれの例も(そして今回の解散も)、内閣不信任決議案の緊急動議提出から解散まで、2〜3分しか経ていません。

第88回国会衆議院本会議第5号(昭和54年9月7日)【いわゆる「一般消費税解散」】
昭和五十四年九月七日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和五十四年九月七日
    午後二時開議
 第一 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件
 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件
 日本電信電話公社経営委員会委員任命につき同意を求めるの件
 日程第一 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 大平内閣不信任決議案(多賀谷真稔君外十二名提出)
    午後二時四分開議
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
 【略】
     ――――◇―――――
○議長(灘尾弘吉君) この際、暫時休憩いたします。
    午後二時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時四十三分開議
○議長(灘尾弘吉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
玉沢徳一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、多賀谷真稔君外十二名提出、大平内閣不信任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(灘尾弘吉君) 玉沢徳一郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 大平内閣不信任決議案(多賀谷真稔君外十二名提出)
○議長(灘尾弘吉君) 大平内閣不信任決議案を議題といたします。
     ――――◇―――――
○議長(灘尾弘吉君) ただいま内閣総理大臣から、詔書が発せられた旨伝えられましたから、朗読いたします。
    〔総員起立〕
  日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
    〔万歳、拍手〕
    午後六時四十五分

第100回国会衆議院本会議第12号(昭和58年11月28日)【いわゆる「田中判決解散」】
昭和五十八年十一月二十八日(月曜日)
    ―――――――――――――
  昭和五十八年十一月二十八日
    午前十時 本会議
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○本日の会議に付した案件
中曽根内閣不信任決議案(石橋政嗣君外十三名提出)
    午後三時三十四分開議
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
保利耕輔君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、石橋政嗣君外十三名提出、中曽根内閣不信任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(福田一君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 中曽根内閣不信任決議案(石橋政嗣君外十三名提出)
○議長(福田一君) 中曽根内閣不信任決議案を議題といたします。
     ――――◇―――――
○議長(福田一君) ただいま内閣総理大臣から、詔書が発せられた旨伝えられましたから、朗読いたします。
    〔総員起立〕
  日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
    〔万歳、拍手〕
    午後三時三十六分

第147回国会衆議院本会議第39号(平成12年6月2日)【いわゆる「神の国解散」】
平成十二年六月二日(金曜日)
    ―――――――――――――
  平成十二年六月二日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 森内閣不信任決議案(鳩山由紀夫君外十一名提出)
    午後一時三分開議
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
野田聖子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 鳩山由紀夫君外十一名提出、森内閣不信任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(伊藤宗一郎君) 野田聖子君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 森内閣不信任決議案(鳩山由紀夫君外十一名提出)
○議長(伊藤宗一郎君) 森内閣不信任決議案を議題といたします。
     ――――◇―――――
○議長(伊藤宗一郎君) ただいま内閣総理大臣から、詔書が発せられた旨伝えられましたから、朗読いたします。
    〔総員起立〕
  日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
    〔万歳、拍手〕
    午後一時五分

*1:第28回国会衆議院本会議第36号(昭和33年4月25日)は、あらかじめ提出された決議案につき与野党間で討論されたいわゆる「話し合い解散」なので、今回の例からは外しました。