ファンタジーに逃げる“下流”の人々 −「年収別」心底、役立った1冊、ゴミ箱行きの1冊

http://president.jp/articles/-/9833?page=2

【土井】500万の人は明らかにファンタジー、エンタメ中心です。『ONE PIECE』なんて漫画は思い切りファンタジーです。
【成毛】そもそも知的な人間は漫画なんて読まないよ。海外企業のマネジメントなんて、漫画本の表紙すら見たことないだろうねぇ。
【土井】『海賊の経済学』(ピーター・T・リーソン)という大変面白い本がありますが、この本によると海賊の社会は極めて平等な社会です。そうした社会に憧れるのは、ある意味、厭世的な姿勢だといえます。1500万の人が『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読んで、ものごとは確率で決まるという冷徹な現状認識を仕入れているのとは大変な違いです。

上流は世の中を動かす法則や権力者の意図、そして政治に強い関心がありますね。苦境の時代こそ、現実を見据え、現実を変えていこうとしている。一方で、500万の人はファンタジーに逃げているように見えます。

海賊の経済学を読む人が「平等な社会に憧れる」というのもよくわからないところです。まず「海賊の経済学」で書かれているのは制度論であってファンタジーではない(海賊=ファンタジー、という短絡はそれこそ「マンガ的」ではないか)ですし、本を読むことは対象に憧れることではないですし(海賊の経済学を読む人は海賊社会にあこがれているわけではない)、そしてこの本では「海賊船において船長の権限が商船と比較して強くなかったのは、海賊船と商船との間での事情の相違による」と書いているわけで土井氏がいう「海賊の社会は極めて平等な社会です」というのは表面的過ぎると思えますし、第一、ランキングによると「500万の人」は「海賊の経済学」をそもそも読んでいないですし。
 
それはそれとして、「1500万の人」を目指していこうという点には私も異論はありません。私が知っている高額所得者(とおぼしき方々)は必ずしも崇高な読書ばかりをしているわけではありませんが、「自己研鑽に励む金融マン」みたいな感じになりきってビジネス書をビシバシ読み倒していきましょう。

ドラゴンランス 1 廃都の黒竜 (上) (角川つばさ文庫)

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いや、ファンタジーとビジネス書は、読む目的が違うんですよ。渡部昇一はコウスティング(退行)として鬼平(たしか)を読んでいたそうですが、私にとっては古典ミステリであったりファンタジーであったりするわけです。
磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

しかしこの手の、「デキるビジネスパーソンはこんな本を読んでいる」というたぐいの企画では、自然科学系の本の扱いは非常に悪いです。純粋な技術書などはともかく、思想を含んだものは読んでも悪くないとは思うのですが。