民法債権法(4)

前回(id:ameni:20130115)のつづき。
7 詐害行為取消権
《1》詐害行為取消権(債権者取消権)
*詐害行為取消権は、債務者が自分の財産を減少させるような処分行為(詐害行為)を行ったときに、債権者がそれを取り消すことによって保全する権利。

(詐害行為取消権)第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
2項 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。

*取消しの要件は、以下。
+詐害行為の時点で、被保全債権が存在すること。(履行期の到来は、不要)
+債務者が、債権者を害することを知りながら、詐害行為を行うこと。
+詐害行為による受益者(転得者)が、債権者を害することを知っていること。
+債務者が、無資力であること。
《2》詐害行為
*詐害行為は、債務者の財産を減少させるような行為。物の譲渡や債務承認、会社設立行為などが該当する。
*弁済行為は、債務を減少させる行為なので、詐害行為には該当しない。しかし、代物弁済は、詐害行為に該当しうる。
家族法上の行為であっても、離婚に伴う財産分与や遺産分割協議は、不相当に過大などの事情があれば、取消権の対象となる。
《3》取消し
*債権者取消権の行使は、裁判所に訴えることで行う。
*訴えの相手方は、直接の取消しの相手である者。受益者(転得者)。
*詐害行為取消権の行使のためには、詐害行為の時点だけでなく、取消権行使の時点でも、債務者の無資力が要求される。
*債権者取消権は、債権者が取消原因(詐害行為・詐害意思)を知った時から2年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、消滅する。
 
8 連帯債務
《1》連帯債務
*連帯債務は、複数の債務者が独立して負う債務。
*債務者のうちの1人が給付をすれば、債務は消滅して、ほかの債務者は債務を免れる(債務者の内部で求償権が発生する)。
*連帯債務の各債務は、独立したものであるので、1つの債務について無効・取消原因があっても、ほかの債務に影響しない(相対効)。
*また、債権譲渡を連帯債務者の1人に通知しても、他の連帯債務者にはその譲渡を対抗できない。
《2》履行の請求

(履行の請求)第432条 数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

*債権者は、複数の連帯債務者に対して、自己の債権の範囲内で、どのように請求してもよい。
*債務者の1人に対する請求の効力は、他の債務者にも及ぶ(絶対効)。1人に対する請求によって、全員の債務についての消滅時効の進行が中断する。
《3》求償権
*弁済によって、債務者の内部で求償権が発生する。
*自己の負担部分に満たない弁済であっても、求償権は発生する。
*弁済をした者が求償権を行使するには、事前・事後に通知をする必要がある。
《4》絶対効
*債務者の1人がした相殺の効力は、他の債務者にも及ぶ。
*相殺できる債務者が相殺をしないときは、連帯債務者は、相殺権者の負担部分について相殺を援用できる。
*債権者が連帯債務者の1人に対して債務を免除したときは、免除を受けた者の負担部分について絶対効があり、その部分につき他の連帯債務者の債務も消滅する。
*債務者の1人について消滅時効が完成すると、その負担部分につき絶対効がある。