民法債権法(3)

前回(id:ameni:20130108)のつづき。
5 債務不履行
《1》債務不履行
債務不履行は、債務の本旨に従った履行がなされないこと。
債務不履行の種類は、(1)履行遅滞、(2)履行不能、(3)不完全履行
*債務者の帰責事由によって債権者が損害を受けたときは、債務者は、正当化事由がないときは、損害を金銭で賠償しなければならない。

(損害賠償の範囲)第416条1項 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

*損害賠償の範囲は、(1)通常損害と(2)予見可能な特別損害、である。
《2》損害賠償額の予定
*損害賠償額の予定とは、当事者間での、債務不履行があった場合に一定額の賠償をする旨の合意。
*債権者は、債務不履行の事実のみによって、賠償額を請求することができる。損害の発生などの立証は不要。
*ただし、実際の損害額が予定の額を上回っていたとしても、債権者や裁判所は、その額を増加することができない。
《3》金銭債務
*金銭債務は、履行不能不完全履行は考えられず、つねに履行遅滞となる。
*金銭債務の履行遅滞では、履行遅滞の事実のみによって、賠償請求できる。帰責事由の証明も不要。
 
6 債権者代位権
《1》債権者代位権
債権者代位権とは、債権者が、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる権利。

債権者代位権)第423条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

*代位行使の要件は、以下。
+債務者が無資力であり、代位行使しなければ債権回収できないとき。
+債権者の債権が、履行期をむかえていること。
+債務者が、権利行使をしないこと。
+代位しようとする権利が、一身専属権でないこと。
*債務者が自ら権利行使した場合には、それが不十分なものであったとしても、債権者は代位行使することができない。
《2》債権者代位権の対象
*債務者に属する権利は、取消権・解除権・援用権などでもよい。
*慰謝料請求権や、離婚の際の財産分与請求権は、債務者の一身専属権であり(→権利者自身が行使すべき権利)、代位行使できない。
*しかし、金額が確定して金銭債権になれば、代位行使できる。
*差押えができない給料債権・受給権なども、代位行使できない。
《3》行使
*債権者は、自分の名で、債務者の権利を行使する。(代理ではない)
債権者代位権は、裁判外でも行使できる。
*権利行使の範囲は、被保全債権の範囲内のみ。ただし、目的物が不可分であるときは、物全体について権利行使できる。ex引渡請求
*金銭支払や引渡の場合には、債権者は、直接自分へ引き渡すように請求できる。この場合に、債権者は、受け取った物を債務者に返還する債務を負うが、これを本来の債権と相殺することができるので、結局、優先弁済を受ける形になる。