会社法(2)

前回(id:ameni:20101004)のつづき。会社法

株式(承前)

(6)発行する全部の株式の内容
会社は、「発行する全部の株式の内容」として、以下の事項を定めることができる。
譲渡制限株式:譲渡による当該株式の取得について、会社の承認を要すること。
取得請求権付株式:当該株式について、株主が会社に対して、その取得を請求することができること。
取得条項付株式:会社が、一定の事由が生じたことを条件として、当該株式を取得することができること。
 
取得請求権付株式では、次の事項を定款に定めなければならない。
1.株主が会社に対して、株式を取得することを請求することができる旨
2.株式一株を取得するのと引換えに株主に対して交付する対価の内容(金額)
3.株主が会社に対して、株式を取得することを請求することができる期間
交付する対価は、社債新株予約権など。
取得請求権は株式の内容そのものなので、分離して譲渡することはできない。
 
(7)異なる種類の株式
株式会社は、次の事項について、「異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式」を発行することができる。
1.剰余金の配当
2.残余財産の分配
3.株主総会において議決権を行使することができる事項
4.譲渡制限
5.取得請求権
6.取得条項、など
これらの株式を発行するには、内容や発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
 
(8)譲渡制限株式
会社は、全部又は一部の株式の内容として、株式の取得について「会社の承認を要する」旨を定款に定めることができる。
譲渡制限株式では、次の事項を定款に定める必要がある。
1.当該株式を譲渡により取得することについて、会社の承認を要する旨
2.「一定の場合においては会社が譲渡の承認をしたものとみなす」ときは、その旨及び当該一定の場合
 
譲渡を承認する機関は、原則として株主総会(取締役会)。定款で、別段の定めをすることができる。
会社の承認を得ずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効。
株主に相続その他の一般承継が起こった場合には、会社の承認がなくても、会社に対して効力が生じる。→株式の所有権は、法律上当然に移転するから。
 
(9)株主の権利の行使に関する利益の供与

(株主の権利の行使に関する利益の供与)
第120条1項 株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。

会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない。
利益供与の推定:以下の場合に、会社の利益供与が推定される。
1.会社が、特定の株主に対して、無償で財産上の利益の供与をした場合
2.会社が、特定の株主に対して、有償で財産上の利益の供与をした場合で、会社の利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないとき。
 
(10)関与者の責任
会社が、財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該会社(又はその子会社)に返還しなければならない。
当該利益の供与を受けた者は、当該会社に対して給付をしたときは、その給付の返還を受けることができる。
利益供与に関与した取締役等は、当該会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。
ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く)が、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
 
(11)株式の併合
株式の併合:数個の株式を併せて、それよりも少数の株式とすること。
発行済株式の総数は減少するが、発行可能株式総数及び発行可能種類株式総数は、自動的に減少することはない。
会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次の事項を定めなければならない。
1.併合の割合
2.株式の併合がその効力を生ずる日
3.会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
 
取締役は、株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
ただし、純資産額等の要件はない。
会社は、株式の併合がその効力を生じる日の2週間前までに、株主等に対して上記事項を通知するか又は公告しなければならない。
公告:定款の定めに従って公告すれば足りる(官報への公告とは限らない)
株券を発行している場合:株式併合の効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を、当該日の1か月前までに、公告し、かつ、株主等には、各別にこれを通知しなければならない。
 
(12)株式の分割
株式の分割:資本金の額を増加せずに、発行済株式総数を細分化して発行済株式総数を増加させること。
会社は、株式の分割をしようとするときは、その都度、株主総会(取締役会)の決議によって、次の事項を定めなければならない。
1.株式の分割により増加する株式の総数の、株式の分割前の発行済株式の総数に対する割合、及び当該株式の分割に係る基準日
2.株式の分割がその効力を生ずる日
3.会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類
 
基準日において株主名簿に記載(記録)されている株主は、効力発生日に、基準日に有する株式の数に1.で定められた割合を乗じて得た数の株式を取得する。
純資産額等の要件はない。
株券を発行している場合:株式併合と違い、株券を提出させる手続を行う必要はない。
 
(13)単元株
単元株:一定の数の株式をもって、株主総会における1個の議決権を行使できる株式。 例)「10株で議決権1個」会社は、その発行する株式について、単元株とする旨を、定款で定めることができる。
一定の数は、1000を超えることはできない。
種類株式発行会社:単元株式数は、株式の種類ごとに定めることを要する。
単元未満株式:会社は、単元未満株式を発行する旨、または、発行しないことができる旨を定款で定めることができる。