秋の紅茶(6)研究者

いままで私は、何人かの研究者を見てきました。中途半端な恫喝しかできなかったり、何を書いても矛盾したり(いわゆる「彼は命題を2つ書いたら必ず矛盾する」)、そういうヘンなのはいなかったものとして、彼らについてのいくつかの話をちょっと思い出してみます。
私の所属していた講座では、小さい実験室が2つあったのですが、そのうちの1つは、教授の道楽道具で埋め尽くされていたんです。で、授業や研究で部屋を使おうとしていた学生に対して「道具に触るな、動かすな」と命じていました。それに納得がいかない知人(学生)が「これはキレてもいいのではないか?」などと憤慨していたのですが、私はというと、単純に部屋の様子が面白くて笑い転げていた(奇妙なもので部屋が埋め尽くされる様子は好きなんですよ)のと同時に、そこまで己の信ずるところを極めようとする求道者たる教授を尊敬(まではいきませんが)していました。
まあそんなこんなで、バイトと課外活動(インチキが横行しているほう*1)の合間を縫って、学校で夜遅くまで調べ物をしてその結果を頭に入れて(復唱しながら歩き回ったりしてましたよ)、疲れたら譲ってもらった廃車で寝ていたりしてました*2。だから私は、そういう勉強する人が好きでして、たとえば毎日フランス語を読みすぎておかしくなって廊下で出会ったら私に抱きついてきていた私法学者などと親しくさせてもらっています。ある公法学者はその私法学者に対して「彼は目つきが悪いね」と言っていたのですが、いやいや必死で取り組んでいる人間はそうなるものなんです。っていうかあなたもなかなかの眼光をお持ちですよ。

*1:毎度言っていることですが。

*2:この廃車(軽ワゴン)がアレで、知人と協力して、シートを敷いて電気ストーブ入れて(コンセントは堂々と学校から取っていました。すみません。)、中に本棚を入れてました。