民法相続(1)

前回(id:ameni:20100913)のつづき。相続にいってみます。

相続人

(1)相続

(相続開始の原因)
第882条 相続は、死亡によって開始する。

死亡や死亡擬制(失踪宣告による)によって、相続が開始する。
一身専属権は、相続されない。ただし、具体的な損害賠償請求権は、相続の対象となる。

(2)相続人
代襲相続: 相続人が先に死亡・同時に死亡した場合には、被相続人の孫が子にかわって相続する。
相続人が排除・欠格事由に該当しても、代襲相続は行われる。
しかし、相続放棄は、代襲原因ではない。
養子: 被相続人直系卑属は、子として、代襲相続できる。
代襲相続: 孫が先に死亡していた場合、その子(ひ孫)が代襲相続する。
配偶者は常に相続人である。子・養子・胎児は第1順位の相続人となる。
直系尊属は、第2順位の相続人。被相続人の兄弟姉妹は、第3順位の相続人。
兄弟姉妹の孫の代襲相続は、認められない。

(3)欠格事由
欠格事由: 該当者は、当然に、相続人たる地位を失う。
ただし、当該相続での相続資格だけを失うのであり、人としての相続能力は否定されない。
事由1: 被相続人・先順位者・同順位者への殺人(予備)により、刑に処せられた者。
事由2: 被相続人の殺害を知りながら、告発・告訴しなかった者。
 ただし、殺害者が自己の配偶者・直系血族である場合には、欠格ではない。
注意)殺害者が兄弟姉妹の場合、告発・告訴しなければ欠格事由に該当する。
事由3: 遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿。
 ただし、破棄が、不当な利益を目的とするものでなければ、欠格ではない。

(4)相続人の廃除
廃除: 被相続人の意思によって、遺留分を含む相続権を完全に奪う。
要件は、虐待や重大な侮辱があった場合。
請求による家庭裁判所の審判・調停の成立により、効果が発生する。
ただし、当該相続での相続資格だけを失うのであり、人としての相続能力は否定されない。

相続の承認及び放棄

(1)相続の承認と放棄

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2項 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

相続放棄: 最初から相続しなかったことになる。
単純承認: 相続人の権利義務を無限に承継することになる。
限定承認: 相続財産の限度で、債務や遺贈を弁済すればよいことになる。
 
共同相続人が限定承認するためには、全員が共同して行う必要がある。
 ゆえに、共同相続人のうちの1人が単純承認すると、他の相続人は、限定承認することができない。
ただし、1人が相続放棄しても、他の相続人は、限定承認することができる。
 →相続放棄者は、最初から相続しなかったことになるから。
債務者が債権者を相続した場合: 通常は、混同により債権消滅する。
ただし、債務者が限定承認すれば、混同により消滅しない。

(2)承認・放棄の時期
時期は、自己のための相続の開始があったことを知った時から3か月以内。(熟慮期間)
熟慮期間は、利害関係者・検察官の請求に基づき、家庭裁判所が伸長できる。
熟慮期間は、相続人ごとに進行する。
相続人が死亡したときは、次の相続人が知った時から開始する。
共同相続人の一人につき熟慮期間が経過しても、他の共同相続人は承認・放棄できる。
相続開始前に、相続放棄することはできない。

(3)承認・放棄の撤回・取消し
撤回はできない。
取消しは、総則規定について、できる。詐欺による相続放棄を取り消すなど。

(4)法定単純承認
法定単純承認: 単純承認したものとみなされる。
事由1:熟慮期間に、承認も放棄もしなかったとき。
事由2:相続人が、相続財産の全部または一部を、処分したとき。
ただし、保存行為と賃貸(602条の期間を超えない)は、許される。
 例)建物の不法占拠者への明渡し請求。
事由3:相続人が未成年のときは、法定代理人の処分。
 例)親権者による相続財産売却

相続の効力

(1)共同相続

(共同相続の効力)
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

遺産分割が終了するまでは、遺産は、共同相続人の共有となる。
遺言で、相続分を定めることができる。
遺留分規定に違反しても、減殺請求までは、遺言は有効。
遺言で、相続債務を指定することはできない。 →債務者は債務の帰属割合を指定できない。
 法定相続分に応じて債務承継する。

(2)相続分
1配偶者と子: 配偶者が2分の1、残りを子が均等に分ける(非嫡出子は半分)
2配偶者と直系尊属: 配偶者が3分の2、残りを直系尊属が均等に分ける。
3配偶者と兄弟姉妹: 配偶者が4分の3、残りを兄弟姉妹が均等に分ける。
代襲相続人: 非代襲者と同じ。