春に向けての紅茶(2)

引っ越し直後

そんなわけで本を整理していると、受験参考書(講師として使っていたもの)がけっこうありました。中学入試の算数とか、電気関係の資格試験とか。しかし受験指導というのは、なんというか、後ろ向きな感じがする仕事なんですよ。たとえば大学生や実務家になって、新しい世界が広がって周りの人たちが活躍するのを横目に、既に終わった話を延々と繰り返す、みたいな。私も、学部時代や院生時代には、好きな仕事ではありませんでした。そんなわけで、アルバイト講師に対して同級生あたりが「ほう、算数を教えているんですか。いやー小学生の算数って難しいですよねえ。」という話題を振ってくるときには、そこには「そんなことをいつまでやっているんですか」みたいなニュアンスが少し含まれているものなのですよ。「オレはせっかく大学生になったんだからキャンパスライフを謳歌している、なのにオマエは・・・」という感じで。
私がかかわったところは、関東地方で難関校の合格者数がけっこう高い(そのぶん中下位生は置き去りにされがち)ところと、やや小さいところの2か所(およびそのフォロー)が主でした。前者はオリジナルテキスト(というかプリント冊子の洪水)、後者は四谷大塚系テキストです。見比べてみると、四谷テキストは中からやや上レベルになりますでしょうか。解説は全体的に同じ程度に詳しい説明であり、また問題のヒネリ方もよく似ています。ということは、上位生には単調で退屈な、そして下位生にはわかりづらい、というレベルです。その一方で前者で使っているオリジナルテキストのほうは、上位生にうまく対応しているな、という気がします。内容の深さについての加速度のつけ方が、「わかってきた!という子どもの気持ちをつかんでいるな」という感想を持たせます。ただいずれにしても、一定のレベルに達していない子の場合には大手学習塾というのは厳しい選択になるわけで、毎回の授業ごとに積み残しが発生してしまうことになります。
 
それはともかく、冊子を整理して場所を確保したかったのですが、しかし、一見すると真っ先に捨ててもよさそうな塾内テキストのほうが価値があるし入手困難であったりします。まあ、本なんてたいていそんなもので、処分する順位としてまずは文庫・新書、そしてハードカバー、雑誌、なんですね。そうなると、見栄えが悪い冊子といえども、簡単には捨てられないことになります。