鉄道営業法

変な法律「ムカシの変な鉄道事情」 さまで、鉄道営業法第15条についての記述があります。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~chu/law/hori_256.htm

同条第2項
乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得

2項は、列車の中で立っていちゃいけないという意味なの?
 
最初そう考えたのですが、この条文についてメールいただきました。
「これは、列車の中に座席が1つでもあればいいという意味ではないかと思います」
つまり、貨物車みたいに座席のない車両に乗っちゃイカンよ、という意味らしいです。
 
じゃあ、山手線みたいに座席の無い車両はどうなるの?
 
山手線6つ扉の車両には引き出し式の座席があるのでこの規定に抵触しないらしいです。
それと、かつて「和田岬線」という路線では車両にわざわざ一つ座席をもうけてこの規定をパスした例もあるとのことです。

とのことです。
ですが、この規定は「席が埋まっている車両に乗車してはいけない」という趣旨の規定だったはずですし、それに、和田岬線の車両(おそらくここで指しているのはオハ64系)の件は、座席がない車両が客車として認められないという理由だったはずです。
 
というわけで、原文章をあたってみました。
立法当時の資料として、帝国議会貴族院議事速記録をみてみると、「この規定は、車内で立っていたら追い出す、という意味か」という議員の質問に対して、政府委員が「中間の駅などでは、座席の残数がわからないうちに乗車券を発行することがある。このときに、座席がなくても『券があるのだから乗車させろ』と主張されることがあって、それを防ぐために掲げた規定である。」と答弁しています。
 
そして、和田岬線のオハ64系は、座席が10人分程度のロングシートしかない奇妙なものでしたが、これは、普通鉄道構造規則(昭和62年3月2日運輸省令第14号)(前身は日本国有鉄道建設規程(昭和4年鉄道省令第2号))の

(旅客用座席)
第196条 旅客車には、適当な数の旅客用座席を設けなければならない。ただし、特殊な車両にあつては、この限りでない。

によるものでした。
なお、普通鉄道構造規則の規定は、現在では、鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年12月25日国土交通省令第151号)に引き継がれていますが、そこでは全体的にラフな規定しかなく、座席の件も、

第73条  客室は、次の基準に適合するものでなければならない。
 5 座席及び立席は、列車の動揺を考慮し、旅客の安全を確保することができること。

という程度にしか規定されていません。今なら、和田岬線を走る103系の座席をぜんぶ取っ払っても、問題はないです。たぶん。
 
余談ですが、同ページの

第39条
車内、停車場其ノ他鉄道地内ニ於イテ発砲シタル者ハ30円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス

「発砲」?!そんなの、車内や駅ぢゃあなくてもダメでしょ?
 
この「発砲」の意味ついては以下のようなメールをいただきました。
「当時猟師が駅で発砲することがあってそれを規制した法律」
「『発砲』とは当時排便の意味があった」
どちらも、もっともらしいですね。引き続き情報をお持ちしております。情報ありがとうございました。

については、同じく貴族院議事録をみてみると、当時は、銃刀法は存在しておらず、銃砲火薬取締規則も制定まもない頃だったので、銃砲携帯ではなく(免許があれば適法)、発砲行為を禁止する規定が必要だったようです。なお、これにつき、旧規定では「砲発」とされていましたが、これではおかしいと法制局のほうで「発砲」とした、という説明があり、それに対して、銃に対して「発砲」の語を用いることに少々の違和感を覚える議員もいました。