プライマー

タイムマシン系ですが、シナリオ中での時間の流れを把握するのが難しい作品です。
 
たいてい、この種の時間系作品では、序盤か中盤で「謎」が提示されます。でもってその「謎」が、観る者を引きつけるわけです。たとえば「タイム・リープ」での「空白の一日」とか、「ぼく、桃太郎のなんなのさ」での写真のなぞとかが、これにあたります。謎解きの面白さがそこにあるわけです。
ところがプライマーでは、その「謎」が提示される場面でのテンションがあまりにも低いために、盛り上がりに欠けるところがあると思いました。そのわりには、前半のつくりも凡庸なのです。いかにも後半に仲間割れするぞといわんばかりの人物関係や、時間航行の仕組みに気づいて株の売買に手を出すあたりが、どうにも退屈感を覚えてしまいました。
 
この作品のウリは、登場人物たちがタイムトラベルのパラドックスを避けようとする理論戦にあります。矛盾がないように、話す内容や見る物まで計算に入れて時間をさかのぼるのですが、しかしそこに別の人物の思惑が重なり、話は展開していく、という流れです。ドンパチ騒ぎとか、痴情のもつれとか、そういう味つけを排した、プレーンな時間系に挑戦した作品です。
ただ、そうはいってもこの作品は、「システムに内包された矛盾」という純粋な理屈で攻めているわけではなく、別の時間航行者という不確定要素を用意して話を引っ張っているわけです。そうなると、もう少しサスペンス的な味付けがあってもいいんじゃないかな、と思いました。時間系にはパラドックスがつきものなのだから、そのパラドックスの見せ方に、もう少し工夫がほしかったかな、と。
あと、制作費の問題もあるとは思いますが、構図も含めて絵が粗いのも気になりました。