「容疑者の心理解明」って、「心理試験」でもするんでしょうか

「乱歩に影響受けた」自殺サイト殺人の前上容疑者
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050811-00000001-yom-soci

インターネットの自殺サイトを利用した連続殺人事件で、逮捕された人材派遣会社契約社員・前上博容疑者(36)が大阪府警の調べに対し、「快楽殺人をテーマにした(推理作家の)江戸川乱歩の小説を中学生のころに何冊も読み、影響を受けた」と供述していることが10日、わかった。
 府警は、前上容疑者の心理解明の手がかりになるとみて調べている。
 前上容疑者は「中学生のころ、女性を窒息させる場面を描いた小説の挿絵に興奮した」と供述。小説の作者は江戸川乱歩だったと言い、「乱歩の作品を色々と読み、人を苦しめながら殺す内容のストーリーに興味を持った」と話した。
 乱歩の研究者らによると、乱歩には、前上容疑者が4年前に起こした傷害事件の手口と同様、女性の口に薬物をしみ込ませた布を押し付けるシーンが登場する作品もあるという。

すみません、時事ネタって書きやすいしアクセスも増えるしで*1、ついつい書いてしまうんですよ。
でもってこの記事です。「女性の口に薬物をしみ込ませた布を押し付けるシーン」って、乱歩作品のなかでは「小林少年がメダルを道に落として目印にする」くらいにベタなシーンなのですが、小説よりもむしろ最近のTVドラマのほうが、「口に布を〜」の場面は多いと思います。文代(明智の妻)ならば眠ったフリをして切り抜けることもできるのですけどね。
 
しかし一方で誰かが、推理小説なんかにありがちな「この、空白の5分間で、犯人は被害者を殺したのです。」みたいな展開に疑問を呈して「5分ではそう簡単に人を殺せない」と反論した、っていう文章がどこかでありました(出所は忘れてしまいました)。でもって、乱歩作品にもその手の批判は昔からいろいろありまして、D坂の殺人事件での縞模様のトリックがありえないとか、孤島の鬼では人間はそんな簡単にくっついたり離れたりできないとか、一卵性双生児なのに性別が違うとか、あちこちでよく言われたものです。そんなわけで、推理小説をヒントに実際に犯罪に出るというのは難しいわけでして、この被疑者の場合も「乱歩の作品を色々と読み」と言ってる割には普通に窒息させているだけですし、そう考えると、パノラマ館とか地獄風景とかのように手段の猟奇性が高い乱歩に影響を受けたというのは意外でした。
読者が実際に犯罪に出たというのが残念ですし、そんな人間に乱歩の名を口にしてほしくなかったのですけれども。

*1:リンク元のチェックはしていませんけども