マニフェスト比較?

民主党の勢いが止まらないみたいな報道がある一方で、その民主党マニフェストが、鉄道ファンには不評だったりします。高速道路と比較すると、確かに鉄道は冷遇されていますから。対照的に、社民党が「自転車道の整備」「開かずの踏切対策の推進」「路面電車の整備」など、雇用・環境にも配慮した政策を公表しているのは好評だといわれます。同じく逓信*1の放送・通信の分野でも、民主党にはみるべき主張が乏しいのに対して、社民党は、

○電波や放送に関わる事業体の選定に関し、権力の介入を許さないためにも、先進諸国と同様に、現在の行政官庁ではなく、独立した第三者機関に委ねる制度作りに着手します。

地上デジタル放送移行では、電波に空きがでるため、適正な審査により、幅広く電波利用を認め、市民にも空き電波を使う道を開きます。一般市民のメディアへのアクセス権を保障するため、既存放送局に市民作成による番組放送枠を設けるよう働きかけるとともに、パブリック・アクセスチャンネルを整備し、諸外国では一般的な市民による放送事業(コミュニティメディア)にも道を開きます。

など、なかなか考えられているようです。
 
さて、社民党の主張の一つである死刑制度廃止は、今回のマニフェストにもしっかりと明記されているのですが、しばらく前に、社民党の議員が、国会にて「絞首刑の執行方法は太政官布告が根拠法令だった」という質疑をしたことがありました。

第171回国会 衆議院法務委員会第2号(平成21年3月11日)
○保坂委員 これから、実は、絞首刑という方法が本当に残虐な刑罰に当たらないという最高裁の、昭和二十六年ですか、この判例が本当にこれでいいのかという議論もしていきたいと思いますので、この死刑の刑場のあり方について一定程度情報公開を、議員に見せたということはある意味で情報公開だったんですけれども、しっかり事実をまず出していただき、それから議論を進めていただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか、死刑の最後の質問なので。
○森国務大臣 今の御質問は、刑場を公開する……
○保坂委員 いや、そういう意味じゃなくて、刑場の公開も一つの選択肢かと思いますが、それをイエスかノーか、どうですかということではなくて、今みたいな議論というのはほとんどこれまでされてこなかったんですね。だって、太政官布告ですから。このポンチ絵と刑場も大分違うわけですよ。ですから、そういうことについてしっかり事実を踏みながら死刑の問題について私は議論をしていきたい、大臣、いかがですかという意味なんです。

最高裁判決」は、おそらく昭和36年でしょう。これについては別のところでも少し書きましたが、「現在執行されている死刑が残虐でないこと」を保障するためには、当該太政官布告が有効であり、なおかつ法律効力を持っている必要があるというわけです。
たしかに、「窒息の方法で死に至らせる」ことが否定されていることは重要であるわけで、現状では刑法で「絞首」としか書かれていないために窒息を排除することができず、むしろ文言から受ける印象として「絞首」からは、縊首による血管の閉塞よりも窒息(気管の閉塞)をイメージさせるので、当該布告が必要なのはわかるのです。
しかし、当該布告の規定が実際の施設と異なっている点や、一度も改正されていないために立法府での審議を受けていない点からも、現状が適切であるとも言いがたい、とも思えます。そうなると、当該布告を廃止して死刑の方法を別の法律に規定する、というのが穏当なところでしょうか。
個人的には、これに限らず、現在効力を持つとされている太政官布告には疑義があり議論が分かれているものが多い(逆にいえば、議論が分かれるから、触ることができずに布告が生き残るともいえるのですが)ので、一度整理することが必要かな、という気がします。
 
太政官布告・達の経緯についておさらい。
明治18年 太政官制度廃止
明治19年 公文式明治19年勅令第1号)公布
 →法律・命令の形式について規定
明治22年 大日本帝国憲法発布
 →第76条1項*2にて、太政官布告の効力を認める
明治40年 公式令明治40年勅令第6号)公布、公文式廃止
*昭和21年 日本国憲法公布
*昭和22年 内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年政令第4号)公布、公式令廃止
*昭和22年 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和22年法律第72号)公布
 →第1条*3にて、法律事項を持つ命令を失効
*昭和29年 各省関係法令の整理に関する法律(たとえば大蔵省については昭和29年法律第121号)公布
 →多くの太政官布告が廃止される
 

*1:逓信系で現在最もホットな論点はもちろん、郵政なのですが。

*2:法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス

*3:日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以て規定すべき事項を規定するものは、昭和22年12月31日まで、法律と同一の効力を有するものとする。