ICとJCT

ここに載せようとしてきのう記事を書いたら、内容が重くなったのでid:kokekokko:20080505へ移しました。そのかわりにもう少し軽いものをのせます。
 
高速道路*1の「インターチェンジ」(IC)と「ジャンクション」(JCT)の違いです。おそらく、「一般道路(いわゆる下道)とつながっているのがIC」で「高速どうしをつなげるのがJCT」であるという程度に区別されているのかなと思います。

では、高速どうしの結節点に一般道路の出入口が併設されていたらどうなるのでしょうか。これをジャンクションと呼んでしまうと、一般道路から高速道路への出入りがジャンクションを使うということになって混乱を招きますし、だからといってこれをインターチェンジと呼んでしまうと、今度は高速の乗継ぎの際にインターチェンジを使うことになって混乱のもとになります。
これを解決する方法の一つは、一つの施設を、名称のうえで分割して、インターチェンジとジャンクションを振り分けることです。同じ名前のインターチェンジとジャンクションが連続することになりますが、少なくとも、下道へ降りる場合と高速を乗り継ぐ場合との区別はできます。吹田や垂水、いよ小松などがこの例です。

 
ところで、ICやJCTの名前について、正式名称ではどうなっているのでしょうか。
「正式名称」の定義にもよりますが、役所(国土交通省)への届出をみてみます。「連結」についてみてみると、次のようになっています。

高速自動車国道法昭和32年法律第79号)
第11条(高速自動車国道との連結の制限) 次に掲げる施設以外の施設は、高速自動車国道と連結させてはならない。
1 道路、一般自動車道又は政令で定める一般交通の用に供する通路その他の施設
【2号以下省略】
 
(連結許可等)第11条の2第1項 前条各号に掲げる施設(高速自動車国道を除く。)を管理する者は、当該施設を高速自動車国道と連結させようとする場合においては、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣の許可(以下「連結許可」という。)を受けなければならない。

これを受けて、省令が規定されています。

高速自動車国道法施行規則(昭和46年建設省令第19号)
第2条(高速自動車国道と道路等の連結の許可手続) 法第11条の2第1項の連結許可を受けようとする者は、次に掲げる事項(法第11条第1号に掲げる施設の連結許可にあつては第1号から第5号までに掲げる事項、同条第2号に掲げる施設(以下「利便施設等」という。)の連結許可にあつては第1号から第8号まで及び第11号に掲げる事項)を記載した申請書に位置図並びに連結のために必要な工事の区間及び工事の設計の概要を記載した平面図、縦断図及び横断定規図(法第11条第1号に掲げる施設にあつては、平面図)を添付して国土交通大臣に提出しなければならない。
1 高速自動車国道の路線名
2 連結位置及び連結予定施設
3 連結を必要とする理由(法第11条第3号に掲げる施設(以下「通路等」という。)の連結許可にあつては、当該通路等により高速自動車国道と連絡する施設が、利便施設等に該当する理由を含む。)
4 連結のために必要な工事に要する費用の概算額
5 工事の施行期間
【6号以下省略】

というわけで、(厳密に解釈すると施設の名称は届出る必要はないということになりますが)ICやJCTを設置する際には申請書を提出するので、そこには名称として「IC」か「JCT」が記載されることになります。
これを受けて東日本高速道路では、次のように説明されています。

インターチェンジ
高速道路と一般道路との出入口として設置されています。料金徴収設備などが併設されています。
広義には、2つ以上の道路が交差または接近する箇所において、相互を連結する道(ランプ)を設けることによってこれらの道路を立体的に接続する施設をいいます。NEXCO東日本では第1種と第3種または第4種の道路が、ランプを介して接続する形状のことです。
 
ジャンクション
JCT) 高速道路と高速道路を相互に接続するインターチェンジのことをいいます。
第1種の道路相互、または、第1種と第2種の道路が、ランプを介して直接接続する形状のことです。

いきなり第1種とか第4種という語が説明なしで登場するのですが、これはおそらく道路構造令での用語でしょう。

道路構造令(昭和45年政令第320号)
第3条第1項(道路の区分) 道路は、次の表に定めるところにより、第一種から第四種までに区分するものとする。

 地方部都市部
高速自動車国道及び自動車専用道路第一種第二種
その他の道路第三種第四種

さて、これをまとめると次のように整理できそうです。インターチェンジは「高速と下道」の連絡、ジャンクションは「高速どうしの連絡」です。結局、ふりだしで書いた区別基準ですね。
ウィキペディアインターチェンジでは、

高速道路を相互に3方向以上に連結する場合は特にジャンクション (JCT) と呼ばれるが、明確な区別はない。ジャンクションを併設(もしくはジャンクション主体で一般道出口はハーフインターチェンジ)しているインターチェンジもある。

とあります。
「明確な区別がない」例として、豊中ICと松原JCTを挙げておきます。豊中は(近くに「中国豊中IC」もあります)、名神高速阪神高速とを連絡するものです。一方松原JCTは(近くに「松原IC」もあります)、近畿自動車道西名阪自動車道阪神高速を連絡します。いずれも連絡部分では高速道路相互の乗継ぎのみができます。さて、この両者のうち、一方がICでもう一方がJCTであるのはなぜなのでしょうか。
これにつき、ウィキペディア・ジャンクションターミナルでは、

高速道路相互または高速道路と一般道路とを連結しているにも関わらずICと呼ばれているが、これは、料金所を介さないとその方向へ行くことが出来ないからである。

としています。つまり、高速どうしの接続とはいえ、いったん精算する場合にはICと呼ぶ、というわけです。しかし少なくともネクスコ東日本の説明では、ICかJCTかの相違は接続される道路の種類によるはずです。確かに、ネクスコ東日本のエリアには、高速どうしの接続なのにICを名乗っている場所はないようです。では、ネクスコ各社がかつてともにJHであった点を考えると、ネクスコ東日本は独自のルールを定めたのでしょうか。ここがよくわからない点です。
ここはむしろ、ウィキペディアでの説明よりもむしろネクスコ東の説明を徹底させて、豊中ICについては、「名神高速豊中IC開業の後で、阪神高速が開通したためにこういう名前なのだ」という歴史的経緯からの例外としたほうが、座りはよさそうです。

*1:今回は、事業者の相違や根拠法令などはおいておき、有料自動車道路を指すものとします。