バタフライ・エフェクト

時間系SFとしては少々脚本が粗い気がします。序盤が長いから伏線が重くなってしまいましたし、いくら「バタフライ効果」とはいっても展開の一つ一つが極端すぎて作品がコメディっぽくなってしまっています。このあたりの描き方がもうちょっと穏やかだったら、もっと優れたSFになれたのにな、という気がします。「誰かを助けると、誰かが不幸(廃人・死亡)になる」という趣旨はよくわかるのですけれども。
演出も、サスペンスというよりはホラーに片足を突っ込んだようなシーンが、特に序盤に多いのが、気になりました。この手の記憶系サスペンスは、普通に物語を描写するだけでジワッと怖さがにじみ出てくるわけで、それが記憶系作品の良さなんですよ。ドラえもんの「しかしユーレイはでた!」では、「不思議なことに、ここでのび太の記憶が途切れる」みたいな文章を書いたコマだけで、この怖さを出しているのです。絵で怖がらせようとして、突然ドーンって包丁を持った子どもを出す、みたいな演出は不要だったと思います。
後半のスピード感は、けっこうよかったです。どんどん書き換えられる過去。観客がシステムに慣れてくるのを見計らっての加速は、私には心地よかったです。
 
一方、青春モノとしてはこの作品はかなり濃いつくりだったと思います。選んだスポットが7歳、13歳、20歳というのが絶妙だと思います。細かいロジックの矛盾なんて吹き飛ぶような、少年時代の甘酸っぱさの描写。誰もが思う「あの時の自分の行動を、もう一度やり直せたら」を、7歳と13歳というスポットで攻めてくるとは、脱帽です。このあたりをどうくすぐられるかによって、この作品への評価が大きく変わるかも知れません。私には、ツボでした。
 
しかし、3つのエンディングのうちならば、私は本編とハッピーサッピーの中間をとれば最高だったかなと思いました。どうでしょうか。最初からずっと絡み合っていた登場人物同士が、最後の事件で相互の記憶を失い、話の全てがチャラになったラストシーンならば、話しかけるところまではいくべきかな。