学校教育での電磁気学の扱い

前回(id:ameni:20060505#1146767155)のつづき。

(2)中学校での学習内容・技術

中学校において電磁気学は、理科だけでなく技術科でも学習します。
■電気機器の保守と利用
機器の基本的な構造・配線、機器の点検、漏電・感電・過熱・短絡の防止、生活と電気といった項目について学習します。理科で学習する知識がなくても学べる程度の内容のはずですが、教科書をみると、電流と電圧、電力と発熱、交流と直流といった程度の内容は適宜説明されています。これは当然のことで、例えばジュール熱について全く触れられていない状態ですと、「過熱の防止」を扱うことができません。
この分野については、内容についての課程間の差異はあまりありません。また、いずれの課程の教科書でも、この分野は必修となっているようです。
 
■回路設計
電気器具の設計に際して、素子と回路、配線について学習します。製作品は、エネルギー変換を利用したものですから、理科のエネルギー分野の知識がある程度必要になってきます。現行課程では、電気の力への変換の過程を主に扱いますが、旧課程や旧々課程では、回路設計の理論的な側面にも重点を置いています。
 
■電気機器の仕組み
旧課程と旧々課程での指導要領は、機器の仕組みとして、回路図の読図と、導電材料・絶縁材料について、項目を置いていました。現行課程ではこの項目は削除されていますが、教科書では回路図や材料について触れられています。
 
■増幅回路
旧々課程での指導要領のみ、「電気2」でこの分野の項目が置かれていました。ただ、トランジスタの構造と役割については、旧課程でも触れられています。
 
■指導要領についての検討
技術科は教科書の裁量が大きく、指導要領で「製作品の設計・製作を扱う」と定められていれば、ある程度高度な製作品の回路図まで掲載されています。この点が、理科のように教科書に掲載する公式・定理まで指導要領に厳密に従う科目とは異なります。
とはいえ、旧々課程から旧課程・現行課程へと進むにつれて理論的内容の扱いは軽くなっています。これは、技術科自体の内容量がすくなっていることもありますが、それ以上に、コンピュータ・情報分野の占める割合が増えて相対的にそれ以外の扱いが薄くなったことや、理科で扱う理論的内容が少なくなったので技術科であまり高度な内容を扱うことができなくなったということが大きいと思います。ただ、電気の分野は木工・金工の分野ほど削減されていませんし、直流・交流など理科で扱う以上の内容を技術科で扱うこともできるので、教科書の内容量はそれほど削減されてはいません。
 
■学習に際して
機器を製作するだけならともかく、理論的側面を押さえるならばまずは理科の電磁気学の内容を理解しておく必要があります。回路図については蛍光灯、機器の構造についてはモーターが重要です。